糖尿病の本を読み漁る
治療を開始しました編に書いたように以下の3つの疑問を解決するべく、糖尿病の本を読み漁りました。医学がある程度進歩しているのだから、発見されてもう何十年も歴史がある糖尿病の原因や治療方法くらい判明しているはずだろうと思ったからです。
①なぜインスリンが効きにくいのに、さらにインスリンを打つべきなのか?
②なぜ抗GAD抗体(インスリン抵抗抗体)ができてしまったのか?
③この治療を続けていって、今後改善の可能性はあるのか?
私の場合、インスリンの分泌はまだある、ということなので完全な1型ではありません。一方、ちまたで出版されている糖尿病本のほとんどは2型についてしか書かれていませんでした。日本の糖尿病患者が1000万人と言われている中、1型の患者数は10~14万人しかいないからです(*注1)。そんなわけですから、私のような1.5型について詳しく書かれている本は皆無でした。
2型……インスリン分泌量が乏しい、インスリンが効きにくい
1.5型……いろいろありますが、私の場合は抗GAD抗体価が高く、インスリンが効きにくい
このままだとインスリンを出し続けた結果、膵臓が疲弊し、1型に移行してしまう
それでも多少は参考になるかもしれないと、2型糖尿病についての本を読んでみました。2型になる原因としては、
・血糖値を下げるのに十分な代謝が足りない=筋肉が足りない=運動不足である
・太り過ぎのために、インスリンがきかない
などが記載されていました。
糖分の取りすぎか? という点については、私の場合、ご飯の量は常に一杯弱だし、間食も虫歯の原因になるので、習慣的&大量には摂らないようにしているので違うと思いました。
運動不足か? というと、子どもの受験が終わってから朝ジョギングをするようになったので、有酸素運動は足りているはずです。とはいえ、無酸素運動=筋トレはやってませんでしたので改善の余地ありと思いました。
最後の、太り過ぎか? という点については、愚者(サイト主)の洋服サイズはLサイズが基本で、LLサイズではないものの、通販で買ったパンツがきつくて時々返品することがあったのは事実なので、まあ、確かに太ってはいるかな、太り過ぎが原因というのなら、改善してみせましょう、という気になりました。
残業で夜遅く帰宅してから夕食を食べるのはやめて、会社で早めに夕食をすませました(幸い社内食堂があったので)。また、ジョギングの途中で筋トレを取り入れてみました(自己流の自重トレでしたが)。
数値がなかなか変わらない中、スタチンの服用が始まる
というわけでいくつか試してみたのですが、数値が劇的に変わるということはありませんでした。具だくさんの味噌汁がいいとか、パンなら全粒粉のほうがいいとか、健康的な食生活を目指してみてもダメでした。
年月日 | HbA1c | 中性脂肪 | LDL | HDL |
---|---|---|---|---|
2018/5/16 | 7.0 | 316 | 132 | 48 |
2018/7/19 | 6.8 | 383 | 143 | 43 |
2018/8/16 | 6.8 | 478 | 計算不能 | 47 |
2018/9/13 | 6.6 | 249 | 182 | 51 |
2018/11/15 | 6.5 | 257 | 195 | 52 |
LDLの数値が高いということで11月にはスタチン(ロスバスタチン2.5mg)の服用を開始するよう言われました。それまで風邪をひくことが皆無でしたが、スタチン服用後、熱が出て、なぜか褐色尿が出たため、一旦服用を中断し、翌年の1月24日からはビタバスタチン1mgに変更しました。
ロカボ(ゆるい糖質制限)を開始する
2型糖尿病の本を読むうちに、ロカボを提唱されている医師の本に出会いました。ゆるいとはいえ、要するに糖質制限です。以前、勤務先の出版社で糖質制限の書籍を出したことがあり、著者のお一人がその後急死してしまったので、効果はあっても、もしかしたら健康には良くないのかもと、半信半疑でした。
ロカボ提唱医師も、糖質制限本著者の指導医師も、自身が1型の糖尿病患者であるアメリカ人医師・リチャード・K・バーンスタイン博士の糖質制限論に影響を受けているようでした。
運動で痩せるのは無理。食事でしか痩せられない、とちまたでよく言われていますが、ロカボを提唱している医師は自身の体験からカロリー制限は間違っていた、糖質制限で初めて効果が出たと書いているので、愚者(サイト主)も試しにやってみることにしました。
年月日 | HbA1c | 中性脂肪 | LDL | HDL |
---|---|---|---|---|
2018/11/15 | 6.5 | 257 | 195 | 52 |
2019/1/24 | 6.6 | 178 | 203 | 50 |
2019/3/28 | 6.3 | 118 | 136 | 65 |
2019/5/15 | 6.2 | 72 | 147 | 60 |
その結果、なんと中性脂肪が激減、常に3桁だったのがついに2桁に落ちました。そして、1年前62キロ以上あった体重が56キロまで激減したのです(LDLが下がったのはスタチンを服用したからですが)。
気を良くしてロカボを提唱する医師のセカンドオピニオンを受けてみようという気になりました。
セカンドオピニオンで知りたかった「今受けている治療方針は正しいのか?」
1型でも2型でもない糖尿病は何でも1.5型糖尿病に分類されてしまうので、1.5型糖尿病にはいろんなタイプがいるようですが、私の場合はSPIDDM(緩徐進行1型糖尿病)(*注2)であり、その中でも抗GAD抗体が高いタイプです。そのタイプに現在行われている治療法の根拠となる研究は2003年に発表された「Tokyo Study」です。
どんな研究かというと抗GAD抗体価が高い患者を
B)スルホニル尿素薬(SU:すい臓からのインスリンの分泌を増やし血糖を下げる飲み薬)を服用するグループ
の2つのグループに分け、1型糖尿病に移行するかどうかを比較する実験でした。結果、Bのほうが移行率が高かったため、A)の治療が有効ということになったのです。
セカンドオピニオンでお話を伺った結果、Tokyo Studyは非盲検多施設共同前向きランダム化研究という客観性の高い研究なので、科学的根拠に基づく治療法であると言われました。つまり愚者(サイト主)が現在行なっている治療法(少量の持続性インスリン投与)は問題ない、ロカボ食を続けることは良いことで、この2つを続けていくことで1型への移行を遅らすことができるということでした。
しかしながら、なぜ抗GAD抗体ができてしまったか、なくすことはできるのか? については明確な回答はありませんでした。
つまり愚者(サイト主)の場合の糖尿病については、完治することはできないということなのです。
これにはかなり落ち込みました。とはいえ自分にできる最善を尽くすしか手はありません。
セカンドオピニオンを受けるには現在かかっている医師のカルテが必要になります。セカンドオピニオンを受けることを告げると、病院を変えたいのだな、自分の手は離れたのだな、と勘違いされてしまい、次回の予約を入れようとしなかったのには慌てました。次回の通院時、現在の治療法で間違いがないと言われたことを告げ、このまま通い続けたいと訴え、事なきを得ました。
定期的に通い続けて1年後、病状が変わらないため、地域の病院への転院を勧められました。
「1.5型糖尿病です④(リチャード・K・バーンスタイン本を読む)。」へ続く。
注1
出典:
糖尿病の種類は1型と2型がある!ふたつの症状と原因を解説(再生医療オンライン)
糖尿病の患者数・予備群の数 国内の調査・統計(糖尿病ネットワーク)
令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要(厚生労働書)
注2
SPIDDMについてのより詳しい説明は日本糖尿病学会のサイトや日本内分泌学会のサイトを参照ください。
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