SPIDDM(1.5型糖尿病)の愚者(サイト主)は、これまでバーンスタイン医師の本を読み、糖質制限を実践し、それなりに問題ない毎日を送っていたのですが、「運動しても(思ったほどは)痩せない理由が分かった!」と、ネットで話題になっていた本書が気になったので読んでみました。
また同じ頃、語学学習が趣味(それほど仕事で要求されているわけでもなく、やってもやっても身につかないが、ボケ防止と時間つぶしにはもってこいの域に達しているという意味で)の愚者は、ただ単にタイトルに惹かれて、こちらも読んでみたのですが、
意外にも、この2冊、妙に共通しているところがある、ということに気がつきました。
どちらも愚者(サイト主)が期待していた、本のタイトルから期待される実利的目的からは逸脱した、いわゆる、脱線ネタが多すぎるという点です。
前者は、進化人類学者がタンザニアの狩猟採集民ハッザ族やオラウータンを対象としたフィールドワークを行い、ハッザ族の食生活と健康の関係、オラウータンと他の生物との比較を研究した結果から、世界中の人類の生活と健康変化の関係を分析し、これまでの常識を覆す結論を導いた画期的な本なのですが、その結論に至るまでのハッザ族やオラウータンとのフィールドワーク描写がとにかく長いのです。運動はダイエットにとってそれほど効果がないという衝撃の内容だけを知りたい読者のために、宝島社などがお手軽まんがムックを作ったら、多分50ページにも満たないのでは? と思うような内容なのです。
そして後者も、語学を極めるためにどうしたらいいかを知りたい読者にとっては、余計な雑学や冒険談(著者が冒険家なのでこちらのほうが真骨頂なのですが)が多すぎて、これまた「語学学習のコツ」だけを抜き出して凝縮してしまうと同じくらいコンパクトな本になってしまいます。
というわけで愚者(サイト主)にとって、ガッカリ本だったのか? というと、両者ともタイトルからは伺い知れなかった、人類の真理に気づかせてくれるという、良い意味で期待を裏切る素晴らしい本でした。
本題に入る前に、まずは愚者(サイト主)が期待した実利的目的に適った記載内容の要点をまとめましょう。
代謝性疾患に悩む読者向けの要点 ~『それでも運動すべき理由』
①<糖尿病患者が知っておくべき「運動量+カロリー消費量は一定」の非情な法則>
・エネルギー??量は、1955年にネイサン・リフソンらが考案した、酸素同位体を含む水を飲み、尿を調べる、二重標識水(Doubly labeled water:DLW)法で測定します。1980年代の後半から同位体の価格が下がり、ヒトにも使えるようになったのだとか(裏を返せば、それまではカロリー??量ばかりを議論していたということです。特にDLW法は、放射能に対する拒否反応が強い日本での普及が遅く、長い間、??量=??量だと信じられていました)。
・運動を増やすと、カロリー??量は減り、食欲が増します。減量したヒトの基礎代謝量(BMR)は??します。飢餓を経験するとかえって体重は増加します。ハッザ族の運動量は激しいけれど、カロリー消費量は欧米人に比べて変わりません。つまり、運動しても??ません。痩せるにはカロリー摂取量を??すしかありません。
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②<糖尿病患者が知っておくべき「脂肪 vs 炭水化物論争」の真実>
・低脂肪食と低炭水化物食のダイエット効果の差はありません。糖類の消費は、2000年をピークに減り始めましたが、代謝性疾患の患者数は増えています。
・血流に入った糖類はグリコーゲンとして筋肉や肝臓に貯蔵されます。グリコーゲンはすぐに取り出せますが、炭素と水が同割合で、重くかさばり、貯蔵量には??があるため、余ったら脂肪として蓄えます。脂肪は水分を含まないので場所を取りません。取り出しに手間がかかりますが、貯蔵量に??がありません! アルカリ電池100倍の高効率。ヒトは脂肪を??に蓄えられますが、類人猿は動物園で飼われていてもデブにはなりません。
・低炭水化物ダイエットの成功の原因はただ単に、????摂取量が減ったから。グリコーゲンは水分が多いから、??的効果が高いので、低脂肪ダイエットより効果的だと誤解されています。
・低炭水化物ダイエットは2型糖尿病の人にはいいかもしれません。インスリンや薬の量を減らせます。しかしながら普通の食事に戻ると??値は上がります(治癒したとは言えません)。そんなダイエット法でも、??が減れば血糖値は下がり、コレステロール値も下がります。血糖値やコレステロール値は、食事内容より??と相関が高いからです。
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③<糖尿病患者が知っておくべき「カロリー摂取量を減らすコツ」>
・現代の食物は満腹感を与える食物??や????質が取り除かれ、??・??・?などの報酬系を刺激するものが加えられています。アメリカ人の摂取カロリーの3分の1が、添加された糖類と油が占めています。脳は脂肪や糖類に強く反応する仕組みになっていて、ドーパミンのような報酬系ホルモンで満たされます。膵臓が出すインスリン、脂肪細胞が放出するレプチン、タンパク質摂取量などが、報酬を減らし、欲求を抑えると、満腹感を覚えます。その綱引きは視床下部で調整されますが、食べ物の??が多いと報酬系はそれぞれに反応してしまい、食欲を抑制するスピードが追いつけません。そのため、甘いものは別腹だったり、標準食事のラットに比べ、カフェテリア式ラットは食べすぎて太ってしまうのです。
・ハッザ族の食事には味がありません。食物??維が多く(アメリカ人の5倍)、脂肪は僅かです。塊茎はいつでもあるものの、掘らなければ食べられません。ハッザ族には心疾患が見られません。
・痩せたければ、体重計で体重を測り、増えていれば、??を変える。これだけです。
1)高????質で、食物??が多く、低カロリー、自炊(生のもの、薄味)が良い
2)??過ぎるもの(高報酬)、加工度が高いもの、外食、保存がきくお手軽スナック、を避ける。
加工食品を手近に置かない
3)????(強い不満や寝不足)は報酬系異常を引き起こし、食べ過ぎにつながります
(貧困とチャンスに恵まれない人々が肥満に陥りやすい)
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④<糖尿病患者が知っておくべき「運動で代謝性疾患が良くなる理由」の真実>
・??量を増やし、????を節約すると、エネルギー不足になって、現代病を引き起こす反応が起こりにくくなる。
1)??が減る
慢性??~心疾患や糖尿病などの代謝性疾患を抑える←運動は糖尿病に良い!(ただし痩せない)
不要な免疫系活動である花粉症や自己免疫疾患を減らす
2)????反応が抑えられる
うつ病が軽減する
3)??を抑える
ハッザ族はテストステロンが工業化社会人の50%しかない。
アスリート女性は生理周期が乱れがちでエストロゲンとプロゲステロンのレベルが低い。
??系のがん(乳がん、前立腺がん)のリクスが低下する
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外国語学習者向けの要点 ~『語学の天才まで1億光年』
こちらは、青春記とか冒険・海外旅行記(とはいえ超ド級に面白い)の趣きの本ですが、外国語学習のコツもそこそこ書かれています。
①<外国語は誰から習うべき?>
・??人から外国語を習ってはいけない、?????から習うこと。?????の発音を録音して繰り返す。
・外国では??人と話さない。英語などの共通言語が分かる?????を雇うこと。
②<外国語はどこで覚えるべき? 忘れないコツはある?>
・現地では、即興で習ってすぐ覚えて??こと。よく??表現から覚えましょう。実際に使って、現地の人に受けることが大事。日本での外国語学習は??と割り切りましょう。現地ですぐ使えればラッキーくらいに割り切ること。忘れていたら、現地でまた聞いて、思い出して、覚え直す覚悟で。
・外国語は??ないと忘れます。なので1度に1言語しか使えません。次の外国語が入ると漏れます(このくだり、糖尿病に似てると思いました。食事を普通に戻すと血糖値などの数値も戻ってしまう。治癒するわけでは無い……)。年を取ってからは????覚えないこと。覚えられないのは仕方ないのだと諦めるように。
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それではどのような内容が愚者(サイト主)にとって予想外だったのかをご紹介しましょう。
タイトルから想像できない目鱗な真実 ~『それでも運動すべき理由』
①<原始人の食生活が理想という嘘>
・霊長類のエネルギー消費量は少なく、長寿になったが、ヒトは生殖ペースが早く、脳が大きく、身体活動は活発なため、脂肪を無限に蓄えられるよう進化した。毛がなく、汗をかくので暑いところにも行ける。移動距離が増大し、過酷な環境でも生きられるようになった。ヒトは日和見雑食動物で、その土地で食べられるものを食べてきた。ハッザ族は、狩猟でたまにタンパク質と脂肪を、通常は野生の里芋を主食とし、炭水化物摂取量は65%(アメリカ人は50%以下)、脂肪の摂取量は20%未満(アメリカ人は40%)だが、メタボの人はいない。高脂肪食を摂る狩猟採取民は北極圏以外にはいない。旧石器時代食に戻るべきと提唱するパレオ食主義者や「いつものパンがあなたを殺す」の著者らは、人類学者に事実を聞いたほうがいい。能力が低い人が厄介であることを、ダニング・クルーガー効果(自分の能力を正しく認識できず、過大評価してしまう認知バイアス)という。学者は慎重だが、ペテン師は自信たっぷりに語る。能力が低い人は、能力が低いために、自分の能力の低さに気づかない! このくだり何だか、デマを撒き散らす某ユーチューバーを彷彿とさせますね。
②<進化のデメリット>
・チンパンジーの運動量は少ない。コレステロール値も高い。だが糖尿病や血管が詰まることはない。脂肪も少ない(体脂肪率は10%未満)。運動は動物にとって必須ではなく、人間だけが異常。
・脂肪を無限に蓄えられる反面、代謝性疾患にかかりやすい(ヒトだけが高血圧、糖尿病、心臓病になる)。
・狩猟採取生活するヒトは分け合うことを覚えた反面、仲間以外と敵対してしまう。
③<何がヒトを進化させたか? そしてこれから進化は続くのか?>
・ヒトをヒトたらしめるのは道具ではない。道具を使う類人猿もいる。火を使うようになってヒトはホモ・エナジェティカスになった。火も代謝の一部。「火を使わず、生で食べる=体内代謝だけ」でヒトは生きられない。
・植物栽培と動物の家畜化で食物に含まれるカロリーは増え、食物を得るために必要なカロリーは減った。出生率が増加し、人口増はヒトの多様化を生み、風の利用、産業革命、化石燃料の活用も行われた。1840年産業革命初期のアメリカでは自分+4人分の食料を生産していたが、今や自分を含め36人分を生産するようになった。加工が安くでき、利益を生む。だが近年、出生率は上がらず、近代化が進むにつれ低下している(身体的進化の限界に達したためではないか?)。
何と著者は(行き過ぎた)人類の進化は止まり、さらに退化しつつあると指摘しているのでした! それに少しでも抵抗すべく、「運動をしろ」と説いているのだなと。
タイトルから想像できない目鱗な真実 ~『語学の天才まで1億光年』
①<旧植民地国では支配者言語者は従属者言語を話さない>
アフリカにおけるフランス人、中南米やインドにおける英米人について、著者はこう指摘します。
支配者言語者は従属者言語(現地語)を決して話そうとしない。
支配者言語者が従属者言語を上手に話すには限界があり、従属者の前で従属者言語をたとたどしく話すと、従属者より劣っているように見えてしまい、見下されてしまうからです(*注1)。
なるほど。これを知って、日本の男性駐在員が現地語を覚えようとしない理由が分かった気がしました。現地採用の幹部社員が日本語を使ってくれるし、ある程度働いたら必ず日本に戻るわけだし、覚えなくても何も困らないし、下手な現地語を話して馬鹿にされるくらいなら、日本語で通したほうがいいわけですよね。反対に、外国に渡った日本人女性が日本人男性よりも現地語を早く覚えられる理由も分かった気がします。
②<言語学習を通して、民族が平等であることを知ろう>
さまざまな外国語を習得してきた著者は外国語学習を通じて、「言語は平等、共通性が多い」と学び、結局はそれは「言語は民族、民族は平等」ということ伝えたかったではないかと。
生成AI時代、わざわざ外国語を習得する意味はあるのか? と言われていますが、今の時代において「外国語を学ぶ」ことの意義は、言語の個性と同時に共通性を知り、民族の平等性に気づくことではないか? と愚者は思いました。
以前、ネットで知り合ったアメリカ人学生が「アメリカ人はあまり外国語を学ぼうとしない(国が広すぎて国内で十分だから)」と嘆いていましたが、最近ますますジャイアン化している某大統領の振る舞いに、何か通ずるところがある気もしました。
注1
諸説あるそうですが、サンフランシスコ講和会議で「日本語でスピーチするよう」白洲次郎が吉田茂首相にアドバイスしたという逸話を知りました。吉田首相は外交官出身だから英語は堪能だったでしょう。また、白洲次郎自身もオックスフォード出なので、英語が国際標準な言語であること、エリートなら当然身につけている教養であることは、身に沁みているはずですよね。それなのに、なぜ日本語にこだわったのか。
この本を読んで分かった気がしました。
大谷翔平選手がもう何年もアメリカにいるのに、例の通訳を使い続けていたことを批判されたことがありました。英語を話そうとしない外国人はアメリカ人には受け入れられないとか、「郷に入っては郷に従え」とか。
しかし、考えようによっては、下手な英語を話して、舐められるより、日本語で押し通すほうが、野球のような勝負事には有利だったのかもしれません。
いい意味で日本人(従来のお行儀の良いイメージ)離れしたF1の角田裕毅選手が「無線(だけ)が課題」と自嘲するのを聞いて、愚者はふとそんな風に思ったりしました。
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