『 少 年 ひ み つ 警 察 』

<密告するピーポくん・拷問するビーバーちゃん・処刑するタラちゃん >

「パパー、この人吐かないよ、なかなか」
「最後まで自分でやる約束だろ」と、優しいけど厳しいパパ。
悪もんの爪の間に差し込んだ針を引き抜いて、あ、そうだ。
「今度は電気でも使ってみようかな」
「気をつけるんだよ」
水の入ったバケツを用意する。いいとこに気付いたぞ。
パパ、帆船の模型造りに戻っている。パイプの煙。
水を使うと皮膚の電気抵抗が減って、とてもよく電気を通すんだ。
きっとうまくいく。
殺しちゃいけない。そんな残酷な事、パパが悲しむ。
何より正義が僕を笑うだろう。
ぶるぶるっと震えて気を失っちゃった、この人。電圧が高すぎたかな、ノートに記録しとこう。

壁の前のコンクリにしみが出来てる。ちょうど雨垂れが落ちるところ。
 赤錆色のしみ。うん、赤錆色って言うんですよ。僕のクレヨンには無いです、十二色だから。
今朝の赤い顔の人、ドカって、ここに倒れたっけ。そう言えばいつもここんとこに頭が転 がるな。血がたくさん出て、まあるく広がって。
 でも、それ以上流れませんよ。コンクリが平らじゃないから。
頭がいつも転がる所だから、へこんで平らじゃなくなったのか。
 ああもう、壁がボコボコです。弾が沢山当たったから。
悪い人が減るのはいい事なんだ。

正義、正義のためによくない。あんなやつ。知らせなきゃ。
ずっと、さっきから見張ってるぞ。
胸の中で何か鳴ってる。ピーポくんだ。

この人の奥さんや子供を使って見よう。悪も んだって、家族を思う気持ちは変わらないってパパは言ってた。
目の前で自分の妻や子供の指が切り落とされたら、この人もほんとの事を話すだろう。
人間だもの、分かってくれるさ。

見張ってるぞ。ここの角で。
あ、犬が来た。やだな。
邪魔すんなよ。匂い嗅ぐなよ、そんなとこの。パンツが黄色いのわかんのかな。
し、知らせなきゃ。見張ってて、知らせなきゃ。
オシッコしたいな。

壁の穴をよく見てみ。
 弾が食い込んでますよ。
肉や骨がちょっとでもくっついてるかな。だって、人間の体を通ってきたんだから。
血はついてるかも知れませんです。
あ、髪の毛が落ちてる。
 どの人のですか。何人目の人のですか。

家族の名前はとっくに調べてある。
「いやぁ、そこまでは思い付かなかったな」と、パパ。
帆船の模型造りがうまく行かないみたいだ。
正義のためだと頭が冴えるんだ」
「勉強もその調子だといいんだがな」笑っていうパパ、「きっとママもそう言うよ」
僕は頭を掻きながら、電話で手配する。
「奥さんと子供を連れて来るように」
僕のきびきびした言い方に、パパ、誇らしげに見える。
やっぱり、子供を先にやるのがいい。
子供のほうが効果が大きいもの。そう、傷だって治りが早いし。何が正義か、早いうちに分かっといた方がいい。
奥さんだって、何時か分かるさ。人間だもの。

部屋の電気が消えた。眠ったのかな。
いやいや、悪もんは電気を消して眠ったりしない。
これからさ。なにかよくないことを始めるんだ。
それとも、ここいらで一旦知らせておこうかな。知らせておいて、他を見回ろうか。
他にも正義が危なくなってるとこがあるかもしれない。オシッコにも行きたいし。
いろんなとこに目を配ってなくちゃいけない。

歓喜の声が聞こえる。壁の穴ぼこから。
  かんきって?なんですか。
悪もんが死んで行く。この世からいなくなる。

広くて明るいリビング。窓際のデスクで帆船の模型造りのパパ。
部屋の真ん中のソファを占領して、尋問が進む。
高い天井に響く悲鳴。

………祈ってもしょうがねえけど、ひと思いに殺してくれ。
そうだ、ついでに、
お米がちゃんと取れますように。
雨が降る所に降って、降らないところに降りませんように。
そして、出来たら、株屋の数よりインチキ芸術家の方が多い世の中になりますように……。


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